英語について

字幕見たっていいじゃない

知り合いや同僚から「英語ができる」ようになりたい、という話をよく聞きます。そこで、「英語ができる」というのはどういうことをイメージしているのかを聞くと、「映画やドラマを字幕を見ないで楽しめるようになりたい」というのと「英語ペラペラになりたい」というのが皆さんに共通した希望のようです。しかし、私が思うに、この二つの動機こそ「英語ができる」ようになることを阻害しているのではないかと思うのです。

まず、「映画やドラマを字幕を見ないで楽しめるようになる」ということについて考えてみましょう。これは、映画やドラマの登場人物が話している内容を、字幕を見なくても聞いただけでわかる、ということかと思います。この目標の危ういところは、少しでも聞いてわからないところがあるとそれでもう「自分にはわからない、できない」と思い込んでしまうところにあります。そこには、例えばアメリカ人だったら映画やドラマの登場人物が話している内容を100%聞き取れているはずだ、という前提があります。しかし、飜って私達の日本語の聞き取り能力を考えた時に、世代の違う人たちや異なる地域の人たちの会話を100%聞き取れるかというとそうではないのではないでしょうか。実際、ネイティブのアメリカ人でも、ハリウッド映画の台詞を60%〜70%くらいしか聞き取れていないという話もあるくらいです。それでも楽しめるように作られているからこそハリウッド映画は世界に進出できるのでしょう。

そう考えると、日本人ですもの、40%位聞き取れなくて当たり前と開き直って、聞き取れなかったことに囚われるのでなく、一つでも聞き取れたものを毎日少しずつ増やしていくことに集中することが大事です。では、聞き取れた、という正解は何を以て確認できるのでしょうか? そう、それこそ「字幕」なのです。字幕を見ないで楽しめるようになるには、字幕を見て、自分が英語をちゃんと聞き取れているかを確認することを毎日繰り返し行うことです。字幕を見て映画やドラマを楽しみながら、その字幕のところを登場人物たちは英語で何と言っているかを想像しながら聞くことです。

時には字幕の日本語が全くの意訳だったり、英語の台詞の順番と日本語の字幕の順番が入れ替わっていることもあるので、聞き取り自体が難しい時もあります。が、大事なのは一つでも聞き取れたものをチェックして、その表現を例えばアメリカ人がどう発音しているか、それを真似してみることです。というのは、実は私達がカタカナで頭の中で思っている発音と、実際のアメリカ人やイギリス人の発音とに乖離がある場合が少なくないからです。簡単な例で言うと、Apple という会社は「アップル」ではなく、アメリカのニュースでは「アーポー」のように聞こえるはずです。Apple=アップルという思い込みが英語を聞こえなくしています。”Thank you.” は「サンキュー」だと思っている方が多いでしょうが、アメリカの映画やドラマの中では「サンキ・ユー」と二つに切って聞こえます。「俺に任せろ」という字幕が出ている時に聞こえる英語は「オニッ」ですが、これは “(I’m) on it!” です。中学校一年生で習うようなこんな簡単な単語すら聞き取れないのは、それが実際にどう発音されているか耳にする経験が少ないからに他なりません。

実際には、映画やドラマで使われている英語は、それ自体そう難しいものではありません。殆どが中学校で習うような簡単な構文・文法のものが多いです。それを聞き取れないのは、今書いたように、文字で見る文や表現とその実際の音とが結びついていないからです。そしてこれを鍛えるのに、字幕を利用しよう、というのが私のおすすめです。「映画やドラマを字幕を見ないで楽しめるようになる」のを未来に先延ばしにするのではなく、「映画やドラマを字幕を見て楽しむ」ことを今実践することが大事だと思うのです。

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