英語について

ペラペラじゃなくていいじゃない

初対面の人に友人から「この人英語できる人なんです」と紹介されることがあります。そうすると8割以上の人が、「ペラペラなんですか?」と聞いてきます。このことからもわかるように「ペラペラ」というのが英語学習の一つの目標になっているようです。しかし、そもそも「ペラペラ」ってどういう状態を言っているのでしょうか? 殆ど反射的に「英語ができる」=「英語ペラペラ」と変換しているだけのように思います。「ペラペラ」というのがどういう状態かはっきりとイメージ、というよりは定義づけできていないので具体的な目標にならず、実現もしないのです。

そもそも「ペラペラ」とは何なのか? ここは歴史的なことがわかる小学館『日本国語大辞典』で調べてみました。すると、初出として1813年〜1823年頃の式亭三馬『浮世床』からの引用で「口の止所がねへ、ぺらぺらぺらぺらと油紙へ何とかやらだ」が出ていて、つまりは「軽薄な調子でよくしゃべるさまを表わす語」という定義になっています。同時に、「特に、外国語などを流暢に話すさまを表わす語」として、1903年〜1904年頃の泉鏡花からの「ペラペラと唐人言葉で親達に口答へなんかする」というのが挙げられています。

「ペラペラ」と並んで「ベラベラ」という表現も使われますね。こちらは同じく『日本国語大辞典』の定義によると元々は「炎をあげてよく燃えるさまを表わす語」で、そこから「とどまるところなくよくしゃべるさまを表わす語」という定義が生まれるようで、『浮世床』より100年ばかり早い「べらべらいふて日をくらしけり」という1737年の例が引かれています。これらのことから考えると、「ペラペラ」も「ベラベラ」も何を言ってるかわからないけどのべつ幕なしに喋り続ける、ということのようです。とすれば、「ペラペラ」や「ベラベラ」は何を言っているかわからない他人から見た時の表現であって、自分の目標とはならないでしょう。(そう言えば、英語では「とか何とか」と言うのを “bla bla bla” と表現しますし、ベラベラ喋ることを “blab” と言いますが、「ベラベラ」と音も意味も似てますね。)

英語はあくまでも、自分を伝えるためのツールに過ぎません。伝えたいことが相手に伝わらなければ意味がありません。英語でなく、日本語の場合を考えて頂きたいのですが、重要なことを決定する会議で、ペラペラ或いはベラベラ喋る人がいるでしょうか。皆、考え考え、ゆっくりと発言するはずです。これは、英語の会議でも同じです。ニューヨークで生まれ育った人でも、大事なことを議論している時はゆっくりと話します。中には興奮して自分の心配を、それこそベラベラと一気に喋る人もいますが、ネイティブであってもそういう時は、「君が心配しているのはこういうことかね?」とゆっくりと確認しながら会議は進みます。自分の考えていることを相手に正しく伝え、相手が考えていることを正しく理解することが何よりも大事です。

そんなわけで、この文章の冒頭に書いた質問「英語ペラペラなんですか?」には私はいつも困ってしまうのですが、「仕事で普通に英語を使っています」と答えるようにしています。仕事ではペラペラ喋ることがないからです。皆さんも「英語ペラペラ」「英語ベラベラ」を目標にするのはやめて、ゆっくりでも自分の考えを伝えられるようにすることを考えるとよいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です